
「保育士は大変」その誤解を解きたくて
現役保育士 / 顧問保育士 / 育児アドバイザー
てぃ先生

保育士として、発信者として。てぃ先生が見つめる保育の世界
キャリア
てぃ先生
高校卒業後、専門学校へ進学。保育士資格・幼稚園教諭・介護福祉士の資格取得 ↓ 2008年、保育士としてのキャリアをスタート ↓ 5年目のときに、保育園の日常をSNSで発信し始める ↓ その後、書籍出版、YouTube、メディア出演など活動が広がり、現在に至る
1#なにゆえ私が福祉職を続けているのか
現役の保育士として働くかたわら、SNSやテレビ、書籍、講演などを通して保育や子どもに関する専門的な知識を分かりやすく発信している、てぃ先生。てぃ先生は、2012年頃から、保育園で巻き起こる子どもたちとの可愛らしい日常をSNSで発信し始めました。
「『せんせい、どうしたら おとな になれるの?』と聞かれたので『20歳になったらかなあ』と答えたら、そばにいいた男の子が『こどもになりたいって思ったらじゃない?』と素敵な答えを言った。本当にそうかもしれない」
こうした子どもたちの自由な発想が瞬く間に話題となり、2014年には書籍を出版。現在はSNS総フォロワーが200万人を超え、「いま一番相談したい保育士」と呼ばれることも。そんなてぃ先生は、どうして保育士を選んだのでしょうか。これまでのキャリアで辞めたいと思ったことは?など「なにゆえ保育士になったのか」を聞きました。
2「ユニフォームを着る仕事」から見つけた天職
「保育士」という仕事を意識したのは、高校3年の進路選択のときでした。当時は特になりたい職業が思い浮かばなかったのですが、漠然とスーツを着て決まった時間に働く“サラリーマン的な働き方”よりは、手に職がつく専門的な仕事をしたいと思っていたんですね。そこで「ユニフォームを着る仕事」に惹かれ、お医者さんやパイロットを考えました。今思えば、相当安易なんですけど(笑)。ですが、学力や学費のハードルに直面し、改めて「ユニフォームを着て、興味を持てそうな専門職は何だろう」と考えたときに浮かんだのが「保育士」でした。僕には2歳年下の妹がいて、妹や妹の友達たちと遊ぶことが好きだったし、友達の家に遊びに行っても弟さんや妹さんの面倒をみるほうが楽しかったことを思い出したんです。ただ、ここだけの話、このとき声優とも迷っていて、母に「保育士か声優か迷っている」と話したら「声優なんて夢みたいなこと言わないで保育士になりなさい」と言われました(笑)。
その後、保育の専門学校に進学して学ぶうちに、「保育士」という仕事が想像以上に大変だと気づきました。進学するまで子どもたちと楽しく遊ぶ仕事なんだろうなとポジティブな面しか知らなかったのですが、実習先で先生たちを見ていると、子どもと遊ぶ時間は全体の1割ほどで、残りは報告書や計画表といった書類作業。先生たちの疲弊した姿を見て「これが保育士か…」と思いました。それでもせっかく資格を取ったからと、一度は現場に出ようと園に就職しました。

3自分に合う園で、“辞めたい”から“楽しい”へ
正直言うと、保育を楽しいと思えたのは2年目に入ってからでした。というのも、1年目は慣れないことも多く、子どもと過ごせる時間は限られ、「明日辞めよう」と思いながらなんとか続けていた時期もありました。
転機となったのは、専門学校時代の友人たちと久しぶりにご飯へ行ったときのこと。友人の一人が「保育士って本当に楽しい」と言ってたんです。自分とは真逆の言葉に驚きつつも、そこで初めて「そういえば」といろんな実習先のことを思い出したんですね。園ごとに個性やカラーがあって、チームで支え合う園、子どもとの時間を大切にできる園などさまざまあり、「園って1つじゃない」と気づいたんです。
その後、転職して新しい園に勤務すると、仕事はきつくても「楽しい」と思える瞬間が増えていきました。その園は、「こういう活動をしたい」「子どもたちとこれをやってみたい」と思うことを、説明さえできれば挑戦をさせてくれる園だったんです。すると自然に「こんな関わり方をしたい」「もっと興味を広げるにはどうしたらいいんだろう」と考え、実践と改善を繰り返すうちに「とにかく辞めたい」から「子どもたちのために何ができるか」へと意識が変わっていきました。そこから「保育って楽しい!」と心から思えるようになりましたね。

4「保育士は大変」その誤解を解きたくて
SNSでの発信を始めたのは、キャリアが5年目になる頃でした。自分が楽しく続けているこの仕事は、世間的には「大変そう」という印象を持たれがちで、ネガティブなニュースが多く取り上げられてしまうのが現状です。当時は今ほど保育士の発信は多くなかったため、「この仕事の楽しさを伝えたい」と思ったのがきっかけです。園と保護者の許可をとったうえでそのような発信を始めると、有難いことに投稿が多くの方の目に留まり、書籍化のお話もいただきました。そしてその発信が現在の活動につながっています。
保育や育児は、多くの人にとって身近な話題なのに、個人情報や家庭の事情もあり、どうしても“ブラックボックス化”しやすい課題があります。それは保育士に関しても同じで、子どもと遊ぶ以外の業務や、仕事のやりがいなどは伝わりづらい部分があります。
発信することには、「誤解を解く」という役割があると思っていて。たとえば、保育士は低賃金だから働きたくないと思われていますが、実際は勤務先によっては一般企業の新卒と同等、もしくは上回る場合もあります。「大変な仕事」と一括りにされがちですが、それはどんな仕事でも同じで、楽しい部分もきっとある。そうした“誤解”を、発信することで少しでも解くことができたらと思っているんです。

5子どもも保護者も。今目指している“翻訳者”という役割
今では嬉しいことに発信者も増え、僕自身は自分がやりたいと思っていた「保護者支援」を中心に発信をしています。これまで「どうしたら自分も楽しめるか」から始まり、「どうしたら子どもたちが楽しめるか」を考えてきました。そして今は「どうしたら保護者も保育士も喜んでくれるか」を考えていきたいんです。
保護者支援へのやりがいは、働く中で徐々に感じていることではありました。お迎えに来た保護者の方が、子どもが楽しそうに遊んでいる様子を見て「先生、今日もありがとうございます」と言ってくださったり、「家では食べない野菜を園では食べるけど、どうしたらいいですか」といった相談を受けたりするうちに、保育士は家庭内の子育てにも良い影響を与えることができる、広がりのある仕事だと思い始めて。
そして、そうした悩みを持つ親御さんは全国にたくさんいらっしゃいます。自分が持つ専門知識や声掛けの引き出しを親御さんたちに託すことができれば、それは結果として子どもたちの幸せにも還元される。最近「てぃ先生は、保育業界のことを翻訳してくれる人だよね」と言われることがあり、それがすごく嬉しいんです。保育業界の見識を保護者にわかりやすく伝えることで、親御さんも、そして子どもたちも笑顔にできる——それが今の僕のやりがいです。
最後に僕は、「どんな人が保育士に向いていますか?」と聞かれたら、必ず「どんな人でも向いています!」と答えています。世の中にはいろんな人がいて、話すのが得意な人もいれば、聞くのが得意な人もいる。笑顔が多い人もいれば、ちょっと不器用な人もいるでしょう。子どもたちにとって、さまざまな大人に出会うことが学びになると僕は思っています。「子どもの幸せを願える」という素質さえあれば、年齢、性別関係なくどんな方でも保育士に向いているはずです。

