
「ありがとう」の言葉が 私の原動力に
日本福祉教育専門学校 介護福祉学科 1年生 学生
フィン・ティ・クイン・チャン

日本とベトナムをつなぐ架け橋になりたい。留学生チャンさんが描く介護の未来
キャリア
フィン・ティ・クイン・チャン
ベトナム出身 ↓ 2023年、介護を学ぶために日本へ留学 ↓ 日本福祉教育専門学校 介護福祉学科へ入学。介護付有料老人ホームでアルバイトも行う
1#なにゆえ私が福祉職を目指すのか
「利用者さんから『ありがとう』と言われると、自然と笑顔になれるんです」。福祉の魅力をそう語るのは、ベトナムから日本へ留学し、福祉を学んでいるフィン・ティ・クイン・チャンさんです。
現在は、日本福祉教育専門学校・介護福祉学科1年生で、介護福祉士を目指しています。子どもの頃、祖父母のお世話をしていた経験から「困っている人を支えたい」という気持ちが芽生え、高齢化先進国の日本で学ぶことを決意。慣れない土地、文化や言葉の壁に直面しながらも、仲間や先生、アルバイト先の利用者と関わるなかで少しずつ自信をつけ、現場での学びを日々の成長に変えています。ベトナムで日本語学校に半年通い、日本語能力試験においてN2を持つチャンさんは、ご自身の言葉で話してくれました。
2ベトナムから日本へ。祖父母との時間から始まった福祉への道
私がこの仕事に興味を持ったきっかけは、子どもの頃に祖父母の面倒をみていたことでした。食事の準備をして一緒に食べたり、簡単な遊びをしたり、お喋りをしたり。おじいちゃんおばあちゃんから「ありがとう」と言われると嬉しくて、笑顔になってくれることにやりがいを感じたんです。自然と「おじいちゃんおばあちゃんのように困っている人を支える仕事をしたい」という気持ちが強くなり、福祉職を目指すことに決めました。
日本で学びたいと思ったのは、2つ理由があります。
1つは、高齢化が進んでいるため、ベトナムと比べると介護の知識や技術が発展しているからです。ケアのレベルの高さに加え、介護機器を利用した介助も行っている、高齢化先進国の日本で介護・福祉を学びたいと思いました。
そしてもう1つは、そうした専門知識だけでなく、日本の文化や人を思いやる心も同時に学びたいと思ったからです。介護は人を相手にする仕事だからこそ、日本人が持つ思いやりや、利他の精神を現地で体感しながら学ぼうと決めました。

3言葉や文化の壁を越えて。仲間とともに学ぶ日々
しかしながら、決意したものの迷う気持ちもありました。言語の壁、慣れない土地で生活をする不安、親元を離れる寂しさ……「だけど、それでも学びたい」その一心で、両親に日本で学びたいことを伝えました。最初は「この仕事は大変だけど大丈夫?」と心配し、日本への留学も反対していて。何日も話し合いを重ね、「私の将来のためになるし、お父さん、お母さんを助けることにも繋がるんだよ」とお願いし続けるなかで、最後には「あなたに向いている仕事だと思う」と背中を押してくれました。両親からのその言葉は、今でも私の励みになっています。
今は、専門学校で介護の基本的な知識や技術、身体の仕組み、高齢者とのコミュニケーションを学び、実習も経験しています。私のクラスには、私と同じように日本で介護・福祉を学びたいと、ベトナムやミャンマー、韓国、ネパール、ウズベキスタンなど各国からの留学生が約26人在籍しています。日本語に慣れるため、みんなとは日本語で話すようにしていて、アルバイトで大変なときには励まし合い、試験前には一緒に勉強することも。私を含めてみんな日本の文化や食べ物が大好きで、特にラーメンやそばは大人気!みんなでお昼に食べに行くこともあります。友達や学校の先生のおかげもあり、少しずつ日本の生活に慣れていきました。

4“心のケア”の大切さ。言葉の裏にある気持ちを想像する
学校で学んだことを実践の場でも活かしたいと思い、入学と同じ時期に介護付有料老人ホームでアルバイトを始めました。そこで実感したのは、介護はただ身体の介助をするだけではなく、心のケアも大切だということ。たとえば入浴介助をするとき、「今日はお風呂に入りたくない」と話す利用者がいらっしゃいます。その言葉の裏には、体調がすぐれない、気分がのらない、お風呂自体が苦手など、それぞれの理由が隠れています。まずは利用者の言葉を受け止めつつ、そのうえで心の中ではどう考えているのか、何を思っているのか、そこまで想像することが大切です。日々変わる利用者さんの気持ちを理解し、寄り添う。利用者一人ひとりの気持ちを尊重することを心がけています。
以前、ベトナムでしていた遊びをレクリエーションに取り入れてはどうかと提案し、先輩スタッフと一緒に道具を作り、実施したことがあります。利用者のみなさんもとても楽しんでくれて、普段は表情が硬い方からも「もっとやりたい」「楽しい」と笑顔で言ってもらえたときは、大きなやりがいを感じました。

5子どものときから変わらず、「ありがとう」の言葉が私の原動力に
私が思う介護・福祉の魅力は、「人とのつながり」と「成長できる学び」です。「人とのつながり」は利用者との関係はもちろんのこと、一緒に学ぶ友達や先生、アルバイト先の先輩スタッフ、施設長など介護を通して、たくさんの方との繋がりができました。周りのみなさんの支えがあるからこそ、今ここで頑張れているのだと思います。
そして「成長できる学び」は、留学理由でもある高齢化先進国の日本で、ベトナムにはない学びを深められることです。もともと機器を使った入浴介助があまり得意ではなかったのですが、経験を重ねるうちにできるようになっていきました。次は、移乗介助の技術を高めることが目標です。また、介護で学ぶコミュニケーションの方法や相手の気持ちを理解する姿勢は、介護に限らず日常生活やこれからの人生でも必ず役に立つスキルだと感じています。
卒業後は、まず日本の介護施設で働き、現場で経験を積みたいと思っています。専門知識や実務経験を身につけ、学んだことを生かして利用者やご家族に信頼される介護福祉士になりたいです。そして、現場の経験を活かしながら、後輩を指導したり、地域福祉にも関われるような存在になりたいと思っています。最終的には、日本と母国ベトナムをつなぎ、介護や福祉の分野で国際的に貢献できる存在を目指しています。
介護と聞くと大変なことも多いイメージがあるかもしれませんが、利用者の笑顔や「ありがとう」という感謝の言葉は、何にも代えがたい喜びがあります。これからも、その言葉を原動力に成長していきたいと思います。

